皆様どうも、きほーてです。
「瞬記(しゅんき)」という言葉をご存じでしょうか。これは、文具コンサルタントの土橋正(つちはしまさし)さんが生み出した、新しい記録の方法です。土橋さんは、長年にわたり文具の世界に携わり、たくさんの人に文房具の魅力を伝えてこられた方。その彼が、2020年の年末、コロナ禍という未曾有の状況のなかで提案したのがこの”瞬記”でした。
瞬記とは、日記のように「何かをきちんと記録する」のではなく、その瞬間にふと思ったことを、自由に書き留めるというシンプルな行為です。書き方にルールはありません。正しい文章を書く必要も、美しい字を書く必要もない。ただ、そのとき感じたこと、思いついたことを、そのまま紙に書き出す。それが瞬記です。
私はこの瞬記に惹かれ、3か月間、毎日続けてきました。今日は、実際に瞬記を続けた私自身の変化を、感情を込めてお話ししたいと思います。
瞬記を始めたきっかけ
正直なところ、最初は「続けられるだろうか」という不安がありました。日記も何度か挑戦しましたが、三日坊主で終わったこともあります。けれど、瞬記には**「良いことを書こうとしなくていい」**というルールのなさがありました。それがとても気楽に感じられたのです。
そして、もう一つ。私は万年筆が好きです。特に、プロフェッショナルギアという一本を育てていきたいと思っていました。書けば書くほどペン先が馴染み、自分だけの書き味になっていく――そんな万年筆の育て方を実感したくて、瞬記を始めたのもあります。
続けて気づいた5つの変化
ここからは、3か月間続けた結果、私自身が感じた変化を5つご紹介します。
1. 万年筆を育てる喜びを実感できた
最初の頃は、少し硬いと感じていたプロフェッショナルギアの書き味。毎日瞬記を書くたびに、少しずつ、確実に、滑らかさと柔らかさを感じるようになりました。たった数行でも、積み重ねれば道になる。そんな感覚です。
そして、ただ使うだけではなく、**「この万年筆を育てている」**という実感が、私にとって大きなモチベーションになりました。
2. 心のもやもやが自然とほぐれていった
瞬記を書いているとき、何も考えずに手を動かしていると、ふと心が軽くなる瞬間があります。嫌なことがあった日でも、上手に気持ちをまとめようとしなくていい。愚痴でも、不安でも、意味がなくてもいい。
ただ書く――このシンプルな行動が、知らないうちに心の奥に溜まったもやもやを流してくれていたように思います。
3. 書くことへのハードルがぐっと下がった
仕事柄、きちんとした文章を書くことを求められる毎日。だからこそ、書く前に「こんなこと書いていいのかな」と身構えてしまう癖がついていました。
でも瞬記では、何を書いてもいい。それが何よりもありがたかったです。「書く」という行為自体へのハードルが大きく下がり、今ではノートを開くこと自体が楽しみになっています。
4. 「今この瞬間」に集中する感覚が芽生えた
瞬記をするとき、私は自然と「今」に意識を向けていました。過去でも未来でもない、この瞬間、自分は何を感じているか。その小さな気づきの積み重ねが、少しずつ普段の生活にも影響を与え始めています。
たとえば、歩いているとき。歌の練習をしているとき。何気ない瞬間に、ふっと「今の姿勢」を意識できるようになったのです。それが直接瞬記のおかげかは分かりません。でも、こうした集中力の芽生えが、確実に生活に良い影響をもたらしていると感じます。
5. 自分自身の時間を大切にできるようになった
以前の私は、YouTubeをだらだら見たり、無為に時間を過ごしてしまうことが少なくありませんでした。もちろん、リラックスも大切です。でも、終わった後に「また時間を無駄にしてしまった…」と自己嫌悪に陥ることもありました。
瞬記を始めてからは、「暇だからYouTube」ではなく、「少しだけでも瞬記を書こう」と思える自分がいます。たとえ数行でも、自分のために手を動かす時間。それは、心に静かな満足感をもたらしてくれるものでした。
瞬記を続けることで得たもの
瞬記を通して私が得た最大のものは、自分自身をありのままに受け入れる感覚です。
上手な文章じゃなくてもいい。うまくまとまらなくてもいい。ネガティブな感情だって書いていい。
そんな「何でもあり」の場所が、私にとってはとても大きな癒しになりました。市役所というきちんとした環境で働く中で、常に「正しく」「整った」文章を求められる日々。そんな中、瞬記は、自分だけの自由な空間になってくれたのです。
瞬記をこれからも続けたい理由
これまでを振り返ると、私は瞬記を続けることで、
- 大好きな万年筆を育てる楽しみ
- 書くことの自由さと気軽さ
- 心の整理と癒し
- 今この瞬間に集中する力
- 自分自身を大切にする時間
これらを手に入れたのだと思います。
だからこそ、これからも私は瞬記を続けたい。万年筆とノートと少しの時間さえあればできるこの習慣を、これからも大切にしていきたいと思っています。
そしていつか、今使っているノートが終わったら――新しいノートを選び、また新しい瞬記の旅を始めたい。そのときを想像するだけで、心がわくわくします。
おわりに
瞬記は、何も特別な準備はいりません。豪華なノートも、高価な万年筆も、完璧な文章も必要ありません。ただ、自分自身のために、今この瞬間を感じながら書く。それだけで、世界は少しずつ、豊かに変わっていくのかもしれません。
これを読んでいるあなたにも、もし興味があれば、ぜひ瞬記を始めてみてほしいと思います。
小さなペンの一歩が、きっと、あなたの心に大きな変化をもたらしてくれるはずです。